川上量生(ニコニコ動画・ドワンゴ会長)の名言集
川上 量生(かわかみ のぶお、1968年9月6日)
株式会社ドワンゴの創業社長であり、現在は代表取締役会長である
愛媛県生まれ、大阪府出身
京都大学工学部卒業後、サラリーマン生活を経て、IT関連企業のドワンゴを創業した。
創業には、当時マイクロソフトに居たジェイムズ・スパーン(のちドワンゴ取締役)とフリーソフト開発集団Bio_100%のリーダーだったaltyこと森栄樹(のちドワンゴ相談役)の協力があった。
ドワンゴの代表取締役として社長や会長を歴任し、同社を東京証券取引所第一部に上場させるまでに成長させた。
当初は「オンラインゲーム専門のゲーム会社」として創業したものの、着メロなど携帯電話関連事業に進出したことから、同社は急成長を遂げた。
その後、スタジオジブリの鈴木敏夫と出会い、ドワンゴの会長のままスタジオジブリに入社した。
スタジオジブリでは見習い扱いのため、無給である。
2013年8月より、庵野秀明が率いる株式会社カラーの取締役に就任し、ITを駆使して日本のコンテンツを守る、言わば「文化の庇護者」を目指している。
また、角川ホールディングス(のちのKADOKAWA)においては、当初は社外取締役として役員に就任していたが、2013年2月より同社の子会社の業務を担当することになったことにともない、社外取締役から通常の取締役となった。
- ドワンゴにはもともと出社していなかった。ジブリに行くようになってドワンゴに出社する機会が増えて週2になった(主にミーティング)
- ドワンゴはコントロールされていない会社(そもそも自分の会社とは思っていない。が、最近愛着が芽生えてきた(笑))
- ジブリの鈴木さんがやっていることをドワンゴを使って練習してジブリにフィードバックしたい。
- ニコニコ超会議(幕張メッセ)の赤字は4~5億円(総額は約7億)
- ドワンゴは派閥抗争などもなく、社員はおとなしすぎてケンカもない。大きくないのに大企業病。だけど成長企業と言われている珍しい会社。
- ニコ動でこれだけ成功しているのなら、僕の無駄遣いを差し引いてももっと儲かっているはず(笑)
- ネットサービスが肥大化するとバージョンアップが難しくなりサイトの新鮮さを出せない。それをイベントでごまかす。「いろいろやっているな感」が大切。
- オワコンは辞めた人が言うもの。自分がやめたものを正当化したいから。簡単には語れないような、人がオワコンと言えないようなサービスを狙ってやっている。それが重要。
- ニートでネットを使っている人のうちニコ動ユーザーは多く、ニコ動は彼等の憩いの場所になっている。最初は世の中のためにならない最低のサービスを作ってしまったと考えていたが、最近はそうでもない。日本のGDPに貢献していない人たちの文化活動が徐々に世界に認められているのは、日本文化の宣伝活動であり、それをニコ動ユーザーに非常にローコストで実現しもらっていると思うようにしている。
- クールジャパンの活動はよくわからないがプラスと言えばプラス。
- googleに代表されるインターネットのフリー文化はコンテンツ、ウェブサービスの価格を破壊した。そのことにすごく腹をたてており、そのアンチテーゼを考える時、いろいろな制約を外す目的で「儲けるのをやめよう」と思った。
- 同時に他の会社にニコ動は多分作れなかった。これまで約5年間ドワンゴはニコ動に100億突っ込んでいる。そうまでしないと動画サービスでお金を生み出すエンジンは作れなかった。それはgoogleに代表されるフリー文化のせいだと思っており、正直こんな不毛な大地でまじめにやっていられない。だからあまり儲けは考えないようにしている。
- ネット企業の多くに見られる上場して資本市場からのお金を狙うだけのビジネスに疑問があった。だからニコ動はユーザーからお金をもらうビジネスにしようと思ったがそのゴールは5~10年後じゃないと無理だと思った。1~2年でペイすることを目的に小銭稼ぎをし、それによって様々な制約を受けるくらいなら、一切考えずに好き勝手やろうと思った。それによって生み出されるサービスの新鮮さを大切にしている。その流れでユーザーもウェブサービスにお金を払うようになってきた。どうやってネットサービスにお金を払ってもらうのをネタにするか、ゲームにするかを考えてきた。「いいじゃん別にお金払ったって」という世の中になって欲しかった。
ドワンゴの決算は毎回ネットニュースになりブックマークされる。そのくらい心配されており、それならジャンジャン赤字を垂れ流してもっと心配してもらうことで宣伝してやろうと思った。同時に「やっぱりお金払わないとだめだよね」ということに気づいて欲しかった。 - 日本人は平等意識が強く、公平な世の中であるが、成功者を叩く傾向にある。しかし世界で戦っていくには、勝っている成功者をえこひいきするのが一番。なのに今の日本には特定のところに肩入れする事ができない。本来韓国のように国をあげて特定の企業を応援する姿があってもいい。日本が強かったはずの分野でそれができない。それが国が衰弱している原因の一つであると思う。
- GREE、モバゲーのコンプガチャのモデルはひどいし腹が立つ。しかし彼等が仮にアコギだとしても、久しぶりに出てきた日本独自の成功モデルを潰していいのか。そこは理性的になるべき。このままの流れではソーシャルゲームのバブルは終わると思う。
- 最近みんな正論好きになっている。世の中にソリューションが見えない時に正論やきれいごとが流行る。しかしその正論にどこまでの覚悟があるのか。彼等の正論は薄っぺらいと思う。
- ドワンゴの社会的な立位置は、世の中に一定の役割を果たせそうだと思う。それを上手く日本のために役立てようと思っている。
- 歌ってみた等のニコ動のアマチュアは、ビジュアル系などのバンドに似ている。それはセルフプロデュースが出来るという点である。セルフプロデュースでファンを増やし力をつける過程は、誰かにプロデュースしてもらって活動することとは決定的に違う。ニコ動のアマチュアもどうやって再生数をあげるかマイリストを増やすかを真剣に考えている。その点で彼らは叩き上げのアーティストに近い。道のないところを1から作りあげていくのは、村上隆さんが既存の商業の仕組みがない所に道を作ったのと似ている。だからニコ動のアマチュアをプロと比べて「カラオケやっているだけ」みたいに軽んじるのはおかしいと思う。
- とは言ってもやはりお金はついて回る問題で、ニコ動のアマチュアだけでは作れない経済圏やシステムづくりを支援しようと思っている。何らかの形でお金を稼げる形、世間的なイメージを上げる。この2点の支援をしたい。
- ニコファーレを作ったのも、ニコ動のクリエイター、パフォーマーにプロでも簡単には使えないような箱でやって欲しかったという思いがある。その点において彼等はプロに引けをとらないイメージを勝ち取ることが出来るのではないか。決して恥ずかしいことだと思わない。
- ニコファーレはプロの人にも使ってもらっているが、ニコニコと関連が深い人には格安で提供している。
ニコ動は登場したての自由でマッドな時代が一番楽しかった。しかしそれを世の中に公認させるためには著作権の問題などで一旦捨てざるを得なかった。JASRAC、角川や色々な権利団体との契約を進めて二次創作が合法的に認められるように活動している。二次創作がまともな活動であり、成功する人が出てくる世の中にしたい。 - 日本のクリエイトは戦略が弱く、アカデミックなところで負ける。日本で最高に強いのは、根性で繊細なものづくりをしている個人個人の職人が強い。だとしたら世界で勝負するには、その職人を支援する。それこそが日本の著作権のしくみで最も重要なことではないか。そして職人同士が共同で仕事をして創作できる仕組みがあればもっと強くなる。だから二次創作、共同創作がもっと認められる世の中になるべき。
- ニコ動が成功する中で大きかったことは、ひろゆき(西村博之氏)が助けてくれたこと、youtubeに切断されたことが非常に大きい。その物語に沢山の人が惹きつけられたのは事実。偶然ではあったけど、そういう物語を海外でも作ることが出来れば世界でもうまくいくと思う。
- google、facebookが作る価値観に対して潜在的な反発というのは世界各地で既にあると見ている。それに対するアンチテーゼを上手く示すことがニコ動海外進出のマーケティングで大切。
- 実名制でインフラになっているfacebookの一極支配が5~10年後崩れるチャンスはあると思う。
- googleからfacebookへ覇権が交代しつつあるというのが世界の流れ。しかしそれほど長くはないと思う。実名制というだけで今までの短いコミュニティー寿命から逃れられるかは、かなり懐疑的。機械中心のgoogleから人間中心のfacebookに流れてきてはいるが、やはりfacebookも人間を数値でコントロールしようとしている印象が強すぎる。そういうfacebookの設計思想は嫌い。
- サービスはそのままだと古びてしまう。mixiは強制解約をしたからユーザーが離れたという話もあるが、やらなくてもユーザーは減ったと思う。その中でmixiは努力したと思うし、それが不当に評価されてしまった。今でも良いサービスだし価値があると思う。
- 今の日本が変わらないでほしい。サブカルチャーや社会体制など見ても今の日本は歴史に残る楽園だと思う。変えなければいけないところは変えつつ、いかに残していくか。そこにニコ動の役割があると考えている。
- メディアにはこの一年、出るようにしている。ジブリの鈴木プロデューサーに場数を踏めと言われているので。
- 自分はすごく保守的な人間である。
- 石川典行は、ニコ生に於いてある部分の代表ではある。しかしこういう人ばかりではない(笑)
- ニコ動の匿名性は、基本的に知らない人同士で瞬間的に一体感を味わう「街角」の雰囲気に似ている。
- ニコニコ生放送のインタラクティブに対応しながら放送するのは、自分を含めて多くの人はうざいと思っているだろう。慣れる必要がある。反応が返ってくる事に価値を感じて動画を上げる人がたくさんいる。同時に反応が返せることに惹かれてユーザーも集まってくる。
- コメント機能は、ポジティブな発想ではなく、「邪魔が出来たり、テレビの速報みたいな字幕ごっこが出来ると盛り上がった所で動画が見づらくなる」→「おもしろいじゃん」というノリで作った。
- ニコ厨のコメントはwの数が多いのが特徴。
- ドワンゴは悪ふざけが好きで、ひどいサービスを考えるときに盛り上がる。午前0時に流れる時報も「面白いからやろう」という流れでできた。
- 掲示板など今までの双方向性があるネットサービスには問題があった。例えば2chは最初のコメントに1000のコメントが付き、1001個目のコンテンツとなって襲ってくる。そうやってコンテンツが増殖するとオリジナルコンテンツの価値が下がってしまい、ノイズが大きくなる構造は不安定だと思った。
そこでコメントが1万付いても10万付いてもあまり意味が無いアーキテクチャーを作れないかと考えた。もともと読めないくらいたくさんのコメントを表示しようというのが目標だった。
読むのを諦めて、なんとなく眺めるようになる構造にした。そうすると2chのようにコメント1つ1つがずっしりと重たくならずにニコ動では軽くなる。 - ニコ動が支持されている理由は「一体感」だと思う。インターネットには共感が少ない。ユーザーが好きなものではなく、嫌なものをいかに見せるのかという点を考えている。インターネットは自分の好きなものしか見ない文化なので、動機付けになる機会が不足している。
昔のテレビのように、好きでも何でもないないのに皆が見てるから自分も見ているという状況をどうやってネットにつくり上げるのかが最初からの課題だった。
ネットにないものを探した結果、ネットには「広場」がないと感じたから。 - ニコ動ほど双方向性が発達しているサイトは、世界的に見てもない。
- ニコニコ動画の名前を考えるとき、「あやしい名前をつけてやろう」と思った。
ニコ動立ち上げ当初は、「WEB2.0」とか「永遠のβバージョン」というキーワードがあったり、ネットサイトが新しくてかっこいい物だという風に言われていた。そういう発想は、ほとんどがアメリカからそのまま持って来た考え方であり、それを日本に持ち帰って偉そうに言っている人たちのことを「ふざけんな」と思っていた。ニコニコのネーミングでそういう人たちを茶化そうと思った。
もともとネット文化は日本のほうが進んでいる。純日本産のイメージを付けるためにも、カッコ悪い名前を堂々と付けた。
本当はかっこわるすぎて、正式サービスの時に名前を変えようと思ったがユーザーの愛着が深まって変えれなくなった。
他に候補は特になく、「なめた名前ってなんだろう」と考えたとき、金融やローンに使われている「ニコニコ」がひどいイメージをごまかしていて胡散臭さを出しており、出したい雰囲気に合っていた。 - ニコ動の会員制はアクセスが多すぎて、サーバーの容量が足りなくなるのを制限するために始めた。普通のサービスはDMを送る目的などで会員制にするが、そういう目的が一切無かった。夏野さんが来るまでの3年間、1000万人の会員に一度もメールを出したことがなく、「何のためにメールアドレスを集めているんだ?」と怒られた。
- 動画サイトはアクセスが増えるほど赤字も増えるがニコ動はプレミアム会員を優遇しており、もらった会費の中でまかなえるように回線やサーバーを多めに用意している。
- 初音ミクは登場のタイミングがよかった。ニコ動ではパロディー二次創作の分野が人気があったが、権利団体との話し合いで削除する方針を打ち出した。その直後に初音ミクも発表した。そうすると著作権に問題があるパロディー作品を作っていたユーザーは、作品が削除されない初音ミクに一気に流れていった。そこで爆発的な人気につながった。
- 日本にはジョブズやgoogle、facebookがなぜ生まれないのか?といわれるが、ネットによって世界はフラットなので世界の覇権国家であるアメリカがどうしても勝ってしまう。上場して何兆円もの時価総額が付くのも覇権国家だからだと思うし、誰にも便利で必要とされる重要なサービスは基本的にアメリカが勝ってしまうと思っている。
そうすると覇権国家ではない日本は、基本的にゲリラ戦をやるしかない。それが正しい道だと思う。
正直ニコ動でコメントが走る意味というのは自分も最初分からなかった。「こういうのもありかな」程度でお祭りやイベントで遊ぶときに使うくらいで、デフォルトにするつもりはなかった。
1ヶ月くらい経ってやっとコメントはなにか新しいものを産み出す強力な物だということに気づいた。そしてそれをアングロサクソンやユダヤの人たちは、感覚的に絶対理解できないだろうし、これは世界で勝負できるポイントだと思った。 - コメント機能は著作物に対する改変や著作者への冒涜だとする社会的制限もまだある。現時点でも完全には社会的に認められているわけではない。(著作物に対する社会的な理解を得づらいサービスなので)海外ではなかなか簡単に真似できないだろうと考えている。
- サービスは説明を付けられると納得して真似しやすくなる。しかしニコ動はうけている理屈が分かっていてもドワンゴの真似をするのはためらってしまう。正常な思考の人はためらってしまうだろう(笑)
- 小沢一郎の登場は、ネットと政治が相性がいいだろうと思っていたから。オタクがサブカルチャーにはまるのは現体制への反抗だと思う。だからネットの人たちは政治に関心がある。
同時にニコ動をバカにしたい人はたくさんいる。そういう人たちがニコ動をバカにするときに困っちゃうような事件を起こしたかった。そうすると正反対の硬いテーマを考えたとき出てきた答えは政治だった。さらに大物政治家に出てもらえば、考え方を変えざるをえないだろうと思った。 - 政治をテーマにする時、日本にとって良いか悪いかを判断するのは、我々にはできないなと思った。そのことに責任も取れないし取ってはいけないと思った。だから多様性を提供することにした。
それは編集なしのノーカットの会見であったり、メディアが出したがらない人をあえて出すことであったりする。しかしその内容をドワンゴとして社論みたいに論ずることはしないようにしている。
それらの取り組みによってメディアを支援したい。会見のオープン化とは言うものの、数人でやっている小さなネットメディアは、全部に行くことは出来ない。それをニコ道でアーカイブして公開することで、少人数でも真面目にジャーナリズムを考える人たちを支援したい。
最近の若い社員はメディアとして振舞いたがる人も出てきているので解決しないといけないと考えている。 - 原子力についての報道などでもあるように、
「明らかに誘導したい結論は持っている。でも誘導はしていないと言っている。そして分かっているかと言ったら分かっていない。」という感じがある。これって日本にとってはマイナスでしかない。だったら色んな意見を紹介すればいいと思う。 - なくなるネットベンチャーが多い中で、ニコ動が今まで、生き残ってこれたのは運が良かったから。
着メロと動画で2回会社の中身を変えてそのたびに生き残ってきた。しかしドワンゴの株価は8年前がピークでそこから徐々に下がってきている。これをサバイバルしているかと言われれば微妙だ。
しかし、株価や利益に縛られる経営はぬるいと思っている。本来会社は生存競争で死ぬか生きるかなので、生き残ろうとはしている。けれど一般のベンチャー企業を見るに、今季の利益や株価がどうこうというのは、「(生死が関わっているのに)そんな甘っちょろいことを言っていていいのか?」と思う。 - Q:ボードゲームが趣味で、そのジャンルはコンピュータに駆逐された。もう趣味の世界がなくなって故郷がない感じでいくら成功しても違う所に行こうとするというが、それははなぜ?
A:これはサラリーマン時代からそうだけど、、、、
企画の相談をするんだけど誰も協力してくれない。
→そして企画が成功すると逆にいろんな人が集まってくる。僕がやっていることをやろうとする。
→そういうのを見ると本当に嫌な気持ちになる。
→じゃあどうぞ。企画段階で賛成しなかったのに、「今なら出来ると思ってるんでしょ?じゃあやってみなよ」と言いたくなる。
→「じゃあ僕は違う方向に行くから」というふうになる - Q:ボードゲームというマイナーな趣味だから、世間の人はなかなかその魅力を分かってくれない。それは簡単には人には伝わらないんだという考えがあるそうですね。
A:それは僕の原点ですね。ボードゲームが面白いと言っても伝えなかったら意味が無いし、一番大事なのは伝えるだけでなく面白いと思ってもらうこと。そうしないと自分と遊んでくれる人がいなくなる。そういう趣味の世界に住んできた。
そして伝えるのが難しいというのに加えて、自分が本領を発揮してはいけない。ボードゲームでいうならせっかく面白さを分かってくれた人を本気で打ち負かしてしまうと二度とやってくれなくなる。その世界を維持しようと思ったら、できても自分でやっちゃダメ。人にやってもらうことが大切。 - 今やっている仕事は基本的に興味がない。ニコ動は例外的に面白みを持ってはいる。人がAという解法を出したのに対して、解法Bを提案し世間が認めてくれれば十分満足。人が将棋指してるのを見て「こういう手もある」と言って認めてくれたら基本的に興味はなくなる。そして新しい解法を見つけたからと言って、それにこだわるつもりもないし天職だとも思わない。
ただニコ動に関しては、まだ色々出来ると思っているので関心を失ってはいない。 - ジブリの鈴木さんに学んでいるわけではなく一緒にいるだけ。今まで理系の本はよく読んだが、ジブリに行ってからは人文学系の本も読むようになり世の中に興味が出てきた。映画を作ることも興味がなかったが、今は刺激があって面白い。
アニメの製作過程はネットサービスに通じるものがある。これからのネットサービスはもっとクリエイティブにならないと勝負にならないと思っており、ジブリの製作過程は参考になる。しかしそれはジブリの中では鈴木さんがやっていることなので、自分がジブリの中で練習する機会は少ない。だからドワンゴで練習している。その実験結果をジブリにフィードバックしたい。
だから、ジブリに行くようになってドワンゴの仕事も増えている。 - ジブリに行くと決めた時、ドワンゴの人は意外と普通に受け止めた。もっと止めたりするもんだと思っていた(笑)
- 学校を辞めさせてドワンゴに採用するのが好き。自分は大学卒業しているからこそ、卒業しても意味が無いことが分かっているから(笑)
- Q:プレミアム会員162万人。どうしてこんなに増やせたのか?
A:元々は携帯の事業をやっていたのでユーザーは課金してもお金をはらうものだという認識はあった。
課金の難しさはあると思うが、だからといって課金なしの無料サービスが正しいかというと、それは嘘だと思っていた。
世界的なネットバブルの時は、みんな上場益を狙っていたから課金で稼がなくても会員を増やして上場すれば稼げるというおかしなモデルがあった。でもそれは永続はしないと思った。
いずれ上場益のモデルは終わり、課金の時代が来ることがわかっていたので、あとはやりようだと考えていた。 - Q:商品やサービスがないコンテンツのネットサービスでは課金以外だと広告モデルもあるが、ニコ動の広告事業はどうなっているのか?
A:一応、広告もけっこう満稿だが、プレミアム会費に比べると少ない。しかしそれは当然だと思っていて、これについてはモデルで説明できる。
基本、ネットのコンテンツがネット広告で稼ぐと言うのは相性が悪い。ネットの広告モデルはページビュー換算(誰かが広告をクリックしないと報酬がもらえない)だから、いくらお金をかけて大元のホームページを広告を入れて作っても結局、そのコンテンツを紹介するgoogleやアフィリエイトサイトのページビューが増えていく。そのページにも広告が貼ってあって広告収入は5~10倍違う。当然オリジナルコンテンツに貼ってある広告が稼ぐ金額は少ない。これは構造としては、最初から9割くらいの税金を持って行かれてるのと同じ。
だからネットバブルが終わったら、コンテンツは有料にならないとやっていけない時代が来ると思っていた。
ちょうどニコ動を立ち上げた時にアメリカのネットバブルが終わったので、このタイミングなら有料モデルが成立する可能性があると思ったし勝算もあった。 - Q:ニコ動は退会率も非常に少ないそうですね。なぜだと思いますか?
A:やっぱり課金モデルは難しくてこのプレミアム会員160万というのは非常に重い。アクティブユーザーという考え方をすると、モバイルだと毎月アクセスするユーザーは全体の30%。残りの半分以上のお客さんは数ヶ月に1回しかアクセスしないが毎月300円払っている。その半幽霊会員がビジネスを支えている。
ところがニコ動はアクティブユーザーが95%くらい。160万人のほとんどがヘビーユーザーで幽霊会員がいない。さっきのモバイルだとアクティブユーザーが160万いたら会員は800万くらいいるはず。
本当にコアな部分からしかお金が取れていない。ニコ動が必要でやむなく会員になっている人が160万人いるということになる。
ヘビーユーザーからしかお金が取れていないのは、まだまだこれからのマーケットだからだと思う。ライトなユーザーからもお金が取れて初めてニコ動は成功といえるのではないか。やっぱり課金は難しい。 - ネットは基本的に儲からない。むしろ儲け目的でニコ動を企画したんだとしたらビジネスのセンスを疑ってしまう(笑)
- Q:イベントなども儲からない。しかし超会議のように人が集まって接触して会話したりするというのはパワーじゃないですか?そこからしか生まれないものもあると思うのですが。
A:本当にそう思う。今はイベントにお金をかけるというのをやらない時代。でも本来イベントというのは時代をつくるものだと思う。みんなトライするんだろうけど予算などの管理が強化されている時代なので、理屈で説明しづらいものにお金が出しづらくなっている。
でもそれはきっと間違いで未熟なのは理屈の方。ちゃんと説明できる理屈が確立されていないだけで、イベントにはやっぱり意味があると思う。
超会議はやってよかったと思うし、長期的に見てニコ動、ドワンゴにとってすごくプラスになったと思う。 - Q:超会議はあの規模が必要で、そこにも意味があったと思うが、どう思っているか?
A:ネットと若年層って社会的に下の方の層だと思われている。非常に評価されづらい。それをリアルにぶつけて可視化すると、きっとショックが生まれるだろうなと思った。そうするとみんなが驚くイベントの大きさってどれくらいだろう?というので幕張メッセ1~8ホール全部使った。 - 一方でニコ動にはいろんな側面がある。オタクだったり自宅警備員だったり、サブカルチャーでももっともコアな人達はニコ動の一部でしかない。世代で言うと30代以降に多い。10~20代になるとライトな層に広がる。もともとサブカルチャーに長くいるオタク原理主義者みたいな人たちからはニコニコ超会議は批判されている。
言ってみればオタクというのは社会の華やかな部分から阻害された人達であり、彼らにとってニコ動は楽園となっていた。そこにまた踊ってる人達のようなの華やかな人達が来るのは彼らは許せないんだと思う。
彼らから追い出されてサブカルチャーに逃げてきたのに何でこんなところまであの人たちは来るんだと思っている人もいる。
超会議というイベントでいろんな人がぶつかることでユーザー自身が「自分はなんなのか」というのが分かってもらえたと思う。いろんな人がいるんだなというのが伝わった。思っていたような化学反応が起きたと思う。 - Q:あるインタビューでは世界で戦っていくと言ったり、一方では世界に出ていくつもりはないといった意見が見れるが、どうしていっていることが違うのか?
A:それは物の切り方の違いです。正直今の状態で世界でやっていくには厳しいと思う。でも世界で勝負出来るポテンシャルは持っているとおもうので機会は伺っている。 - 川上Q:オタクがサブカルチャーにはまるのは現体制への反抗だと思うが、逆に村上さんに聞きたい。村上さんのデビュー作や69を読んだが、あそこで描かれているのは明らかに社会に対して反抗した人達ですよね?
村上A:反抗というか。。。まともに社会で生きられなかった人達ですよね。 - 川上Q:JMMも購読していて思うのは、村上さんは言ってみれば大勢側に寝返ったようにも見受けられる。その辺の心境ってなんだったんだろうというのを聞いてみたい。
村上A:まずカンブリア宮殿をやろうと思ったのは。。。。僕が育った高度成長期はほとんどの企業が成功していた。そして誰かが成功すると、他の会社もそのモデルを真似していたけど、需要がものすごくあるので後発組も成功して、経済は勢い良く上がっていく。
一方、今では成功している企業は少ない。成功企業にもダーティーな部分もあるとは思うが、カンブリア宮殿の中では企業が成功した要因を正確に捉えて、圧倒的に多い成功してない企業の具体的な参考にしようと思った。
あと、もうひとつ寝返ったように見えるのは、作風が変わってきたのもある。それは年をとったからではない。
昔だと福生の米軍ハウスで麻薬をやったり、暴力沙汰があったりという当時の作風は、例えるならお父さんがすごく強くて、そこで庇護されてるガキがオヤジに反抗して悪さをやってたような感じ。それに対して今を例えるなら、オヤジは病気で死にそうになっていて、、、、昔の作品に書いたようなことは新聞の三面記事を見ればどこにでもある。麻薬だって中学生がやっているような話だってある。
(寝返ったと言われるかもしれないが)決して今でも「いい事」を書こうと思っているわけではない。だからといって非常にネガティブなことを書いて、暗たんとしている人にブワッと水をぶっかけるような時代でもないと思っている。
そういう変化がいつの頃からか出てきていて、作風も変わってきたし、こういう番組もやっている。だからそういうふうに(寝返ったように)映るのかもしれない。
かわんご大きくうなづく(笑)
カンブリア宮殿での質問