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勝 海舟の名言集

公開日: : 最終更新日:2014/03/18 , か~こ , , ,


katukaisyuu

勝 海舟 / 勝 安芳(かつ かいしゅう / かつ やすよし)

江戸時代末期から明治期にかけての幕臣、政治家。位階勲等は正二位勲一等伯爵

幼名および通称は麟太郎(りんたろう)。本名義邦 (よしくに)、維新後改名して安芳。これは幕末に武家官位である「安房守」を名乗ったことから勝 安房(かつ あわ)として知られていたため、維新後は「安房」を避けて同音(あん−ほう)の「安芳」に代えたもの。勝本人は「アホウ」とも読めると言っている。海舟は号 (称号) 号で、佐久間象山から受領の篆刻「海舟書屋」からとったものである。
父は旗本小普請組(41石)の勝小吉、母は信。幕末の剣術 剣客・男谷信友はいとこ 従兄弟に当たる。海舟も10代の頃は剣術修行に多くの時間を費やしている。家紋は丸に剣花菱。

  • 一体支那五億の民衆は日本にとつては最大の顧客サ。また支那は昔時から日本の師ではないか。それで東洋のことは東洋だけでやるに限るよ。

  • 日清戦争はおれは大反対だつたよ。なぜかつて、兄弟喧嘩だもの犬も喰はないヂやないか。たとへ日本が勝つてもドーなる。支那の実力が分つたら最後、欧米からドシドシ押し掛けて来る。ツマリ欧米人が分らないうちに、日本は支那と組んで商業なり工業なり鉄道なりやるに限るよ。

  • 長刀を二本差して来た奴があるので『お前の刀は抜くと天井につかへるぞ』といつてやつたら、その奴は直ぐ帰つてしまつた事があつた。またある時は既に刀を抜きかけた奴もあつたが『斬るなら見事に斬れ。勝は大人しくして居てやる』といふと、たいていな奴は向ふから止めてしまふ

  • 人は何事によらず胸の中から忘れ切るといふことが出来ないで、始終それが気にかゝるといふやうではなかなかたまつたものではない。いはゆる座忘といつて、何事もすべて忘れてしまつて、胸中濶然として一物を留めざる境界に至つて初めて万事万境に応じて横縦自在の判断が出るのだ

  • どうも、あなた方は、人間を死んだものゝやうに思つて居なさるのが悪い。メシを食ふ、生きたものだから、そのつもりで扱ひなさらねばなりませぬ。

  • おのれに執一の定見を懐き、これをもつて天下を律せんとするのは決して王者の道でない。鳧の足は短く、鶴の脛は長いけれども、みなそれぞれ用があるのだ。反対者には、どしどし反対させておくがよい。我が行ふところはこれであるなら、彼らもいつか悟る時があるだらう。

  • 坂本龍馬。彼れは、おれを殺しに来た奴だが、なかなか人物さ。その時おれは笑つて受けたが、沈着いてな、なんとなく冒しがたい威厳があつて、よい男だつたよ。

  • 私は人を殺すのが大嫌ひで、一人でも殺したものはないよ。刀でもひどく丈夫に結はえて決して抜けないやうにしてあつた。人に斬られてもこちらは斬らぬといふ覚悟だつた。ナニ、蚤や虱と思へばいゝのサ。肩につかまつてチクリチクリと刺してもたゞ痒いだけだ。生命に関りはしないよ

  • 機先を制するといふが大切だが、機先に後れると、後の先といふものがある。角刀取(すもうとり)を見ても、直にわかる。このこつを知るものが勝つのだ。

  • 今年破れた所を丈夫に直すと、この次はその向ふが破れるものだよ。

  • 男児世に処する、たゞ誠意正心をもつて現在に応ずるだけの事さ。あてにもならない後世の歴史が、狂と言はうが、賊と言はうが、そんな事は構ふものか。要するに、処世の秘訣は誠の一字だ。

  • おれは江戸児だよ。世間の人とはちやうど反対さ。人の悪き時節にはしげしげ行くけれども、その人がモー良くなればチツトも行きやしないよ。ずいぶん荒療治もする代りに涙ポイ方だよ。

  • かへすがへすも後進の書生に望むのは、奮つてその身を世間の風浪に投じて、浮ぶか沈むか、生きるか死ぬるかのところまで泳いでみることだ。

  • 一身の栄辱を忘れ、世間の毀誉を顧みなくつて、そして自から信ずるところを断行する人があるなら、世の中では、たとへその人を大悪人と言はうが、大奸物と言はうが、おれはその人に与するヨ。つまり大事業を仕遂げるくらゐの人は、かへつて世間からは悪くいはれるものサ。

  • いつ松を植ゑたか、杉を植ゑたか、目立たないやうに百年の大計を立てるが必要サ。

  • 世の中に不足といふものや、不平といふものが始終絶えぬのは、一概にわるくもないヨ。人間は、とにかく今日の是は、明日の非、明日の非は明後日の是といふ風に、一時も休まず進歩すべきものだ。

  • 人はみな、さまざまにその長ずるところ、信ずるところを行へばよいのサ。社会は大きいから、あらゆるものを包容して毫も不都合はない。

  • 人はどんなものでも決して捨つべきものではない。いかに役に立たぬといつても、必ず何か一得はあるものだ。

  • もしわが守るところが大道であるなら、他の小道は小道として放つておけばよいではないか。智慧の研究は、棺の蓋をするときに終るのだ。

  • 人が来て囂々とおれを責める時には。おれはさうだらうと答へておいて争はない。そして後から精密に考へてその大小を比較し、この上にも更に上があるだらうと想ふと、実に愉快で堪へられない。

  • 主義といひ、道といつて、必ずこれのみと断定するのは、おれは昔から好まない。単に道といつても、道には大小厚薄濃淡の差がある。しかるにその一を揚げて他を排斥するのは、おれの取らないところだ。

  • 天下の事に任ずるくらゐのものは、今日朝野にどんな人物があるかといふことは、常に知つて居なくては困る。おれなどはあらかじめその辺を調べて、手帳に留めておいた。すると瓦解の際におれの向ふに立つた奴は、西郷を初めみな手帳の中の人物に洩れなかったヨ。

  • 世間は活きて居る。理屈は死んで居る。

  • 今の奴らが、逃げても負けても恥とも思はず、虚言をついても、裏切をしても、一向平気で、それでもつて有志者だとか、政治家だとか威張つて居るのみか、世間の者もこれを咎めないのは、実に呆れてしまふヨ。どうしてこんな人間の意気地がなくなつたか知らん。

  • 世の中に無神経ほど強いものはない。あの庭前の蜻蛉を御覧。尻尾を切つて放しても、平気で飛んで行くではないか。

  • 困苦艱難に際会すると、誰でもこゝが大切の関門だと思つて、一生懸命になるけれど、これが一番の毒だ。世間に始終ありがちの困難が、一々頭脳に徹へるやうでは、とても大事業は出来ない。こゝは支那流儀に平気で澄まし込むだけの余裕がなくてはいけない。

  • いくら物事に齷齪して働いても、仕事の成就するものではないヨ。功名を為うといふ者には、とても功名は出来ない。きつと戦に勝たうといふものには、なかなか勝戦は出来ない。これらはつまり無理があるからいけないのだ。詮じつめれば、余裕がないからの事ヨ。

  • 根気が強ければ、敵も遂には閉口して、味方になつてしまふものだ。

  • もし成功しなければ、成功するところまで働き続けて、決して間断があつてはいけない。世の中の人は、たいてい事業の成功するまでに、はや根気が尽きて疲れてしまふから、大事が出来ないのだ。

  • いはゆる心を明鏡止水のごとく磨ぎ澄ましておきさへすれば、いついかなる事変が襲うて来ても、それに処する方法は、自然と胸に浮んで来る。いはゆる物来りて順応するのだ。おれは昔からこの流儀でもつて、種々の難局を切り抜けて来たのだ。

  • 活学問にも種々仕方があるが、まづ横に寝て居て、自分のこれまでの経歴を顧み、これを古来の実例に照して、徐かにその利害得失を講究するのが一番近路だ。さうすれば、きつと何万巻の書を読破するにも勝る功能があるに相違ない。

  • 世間の事には、自から順潮と逆潮とがある。したがつて気合も、人にかゝつて来る時と、自分にかゝつて来る時とがある。そこで、気合が人にかゝつたと見たら、すらりと横にかはすのだ。もし自分にかゝつて来たら、油断なくずんずん押して行くのだ。

  • 若い時には、この色慾を無理に抑へようとしたつて、それはなかなか押へ付けられるものではない。ところがまた、若い時分に一番盛んなのは、功名心であるから、この功名心といふ火の手を利用して、一方の色慾を焼き尽すことが出来れば甚だ妙だ。

  • 天下の大勢を達観し、時局の大勢を明察して、万事その機先を制するのが政治の本体だ。これがすなはち経綸といふものだ。この大本さへ定まれば、小策などはどうでもよいのサ。

  • 『亜米利加では、政府でも民間でも、およそ人の上に立つものは、みなその地位相応に怜悧で御座います。この点ばかりは、全く我国と反対のやうに思ひまする。』と言つたら、御老中が目を丸くして、「この無礼もの扣へ居らう」と叱つたつけ。ハヽヽヽ。

  • 平生小児視して居る者の中に、存外非常の傑物があるものだから、上に立つ者は、よほど公平な考へをもつて、人物に注意して居ないと、国家のため大変な損をすることがある。

  • 行政改革といふことは、よく気を付けないと弱い者いぢめになるヨ。全体、改革といふことは、公平でなくてはいけない。そして大きい者から始めて、小さいものを後にするがよいヨ。言ひ換へれば、改革者が一番に自分を改革するのサ。

  • 人はよく方針々々といふが、方針を定めてどうするのだ。網を張つて鳥を待つて居ても、鳥がその上を飛んだらどうするか。我に四角の箱を造つておいて、天下の物を悉くこれに入れうとしても、天下には円いものもあり、三角のものもある。

  • 尊王心と愛国心とが一致しないと、尊王の実は挙がらないヨ。当世の尊王家たちには、ちと規模を大きくして貰ひたいものだ。人民を離れて尊王を説くのは、そもそも末だワイ。

  • 世の中を治めるには、大量寛宏でなくては駄目サ。八方美人主義では、その主義の奏功にばかり気を取られて、国家のために大事業をやることは出来ない。

  • 一個人の百年は、ちやうど国家の一年くらゐに当るものだ。それゆゑに、個人の短い了見をもつて、あまり国家の事を急ぎ立てるのはよくないヨ。

  • 国民が今少し根気強くならなくつては、とても大事業は出来ないヨ。隣の奥さんをいぢめるくらゐを、外交の上乗と心得るやうでは困るヨ。今少し遠大に、しかして沈着に願ひたいものだ。

  • 外交の極意は、誠心正意にあるのだ。胡麻化しなどをやりかけると、かえつて向ふから、こちらの弱点を見抜かれるものだヨ。

  • 学者の学問は、容易だけれども、おれらがやる無学の学問は、実にむつかしい。

  • 経済のことは経済学者には分らない。それは理窟一方から見る故だ。世の中はさう理窟通り行くものではない。人気といふものがあつて、何事も勢ひだからね。

  • 見なさい、いかに仲のよい夫婦でも、金が無くなつて、家政が左前になると、犬も喰はない喧嘩をやるではないか。国家の事だつて、それに異ることは無い。

  • 当世の政治は、何事でも杓子定規の法律万能主義でやらうとする。それは理屈はなかなかつんでも居ようが、どうも法律以外、理窟以上に、言ふに言はれぬ一種の呼吸があつて、知らず識らず民心を纏めるといふ風な妙味がない。人心を慰安するところの余韻がない。

  • 政治家の秘訣は、ほかにはないのだよ。たゞ正心誠意の四字しかないよ。道に依て起ち、道に依て坐すれば、草莽の野民でも、これに服従しないものはない筈だよ。

  • この間は二十年ぶりで慶喜殿に面会したが、『善いことはみな自分でしたやうに、悪るい事はおれは知らない、みな勝がしたと、人に言うて置け』とおれは言うた。

  • 大きな人物といふものは、そんなに早く顕れるものではないヨ。通例は百年の後だ。今一層大きい人物になると、二百年か三百年の後だ。今の人間はどうだ。今の事は今知れて、今の人に賞められなくては、承知しないといふ尻の孔の小さい奴ばかりだらう。

  • 上つた相場も、いつか下る時があるし、下つた相場も、いつかは上る時があるものサ。その上り下りの時間も、長くて十年はかゝらないヨ。それだから、自分の相場が下落したと見たら、じつと屈んで居れば、しばらくすると、また上って来るものだ。

  • おれが死んだら、たれかおれに代るものがあるかといふことも、ずいぶん心配ではあつたけれど、そんな事はいつさい構はず、おれはたゞ行ふべきことを行はうと大決心をして、自分で自分を殺すやうな事さへなければ、それでよいと確信して居たのサ。

  • 国といふものは、決して人が取りはしない。内からつぶして、西洋人にやるのだ。

  • 外国へ行く者が、よく事情を知らぬから知らぬからと言ふが、知つて往かうといふのが、善くない。何も、用意をしないで、フイと往つて、不用意に見て来なければならぬ。

  • ナニ、忠義の士といふものがあつて、国をつぶすのだ。己のやうな、大不忠、大不義のものがなければならぬ。

  • 百年の後に、知己を待つのだ。なにが、わかるものか。昔から、大功の有つた人は、人が知らないよ。久しうして後にわかるのだ。

  • 内で喧嘩をして居るからわからないのだ。一つ、外から見てご覧ナ。直きにわかつてしまふよ。

  • ナニ、誰を味方にしようなどといふから、間違ふのだ。みンな、敵がいゝ。敵が無いと、事が出来ぬ。国家といふものは、みんながワイワイ反対して、それでいゝのだ。

  • 西洋は規模が大くて、遠大だ。チャーンとして立って居るから、外が自然に倒れるのだ。まるで、日本などは、子供扱ひだ。褒めてやつたり、叱つたりする。それで、善い気になつてるといふものがあるものか。

  • 国といふものは、独立して、何か卓絶したものがなければならぬ。いくら、西洋々々といつても、善い事は採り、その外に何かなければならぬ。それが無いのだもの。つまり、亜細亜に人が無いのだよ。それで、一々西洋の真似をするのだ。

  • どうか、小さくならぬやうに。これだけと限つてしまふと、それより大きい事のあつた時、仕方が無いから。どうか、限らないやうに。

  • 事を遂げるものは、愚直でなければ。才ばかり走つてはイカヌ。

  • 政治家も、理窟ばかり言ふやうになつては、いけない。徳川家康公は、理窟はいはなかつたが、それでも三百年続いたヨ。それに、今の内閣は、僅か三十年の間に幾度代つたやら。

  • おれは悪口を言ふわけではないが、コンナ博士とか技師とかいふ先生らはみんな書物を読んだばかりで肩書があるのみ、書物と仕事とはまるで違ふものだよ。五年か八年も書物を読めば、誰でも博士や技師ぐらゐにはなれるぢやないか。それだから困るといふのだよ、どうだ。

  • それだからおれが言はない事ではない。堤防築造の事は、御上でもよほど注意しなければなりませんぞとイツデモ言うて居るのに、災害を眼の前で見なければ平気の平左衛門で居るから困るのだ。おれの言うことは後になると屹度事実となりて現れて来るが不思議ぢやないか。先があまりに見え過ぎるからだよ。

  • 旧幕は野蛮だと言ふなら、それで宜しい。伊藤さんや、陸奥さんは、文明の骨頂だといふぢやないか。文明といふのは、よく理を考へて、民の害とならぬ事をするのではないか。それだから、文明流になさいと言ふのだ。

  • 山を掘ることは旧幕時代からやつて居た事だが、旧幕時代は手の先でチヨイチヨイやつて居たんだ。海へ小便したつて海の水は小便にはなるまい。手の先で掘つて居れば毒は流れやしまい。今日は文明ださうだ。文明の大仕掛で山を掘りながら、その他の仕掛はこれに伴はぬ。わかつたかね…元が間違つてるんだ

  • 既に今日の如くならば、たとひ鉱毒の為ならずとも、少しその水が這入つても、その毒の為に不作となるやうに感ずるならん。さうして如何にして民心を安んぜんや。

  • 鉱毒問題は、直ちに停止の外ない。今になつてその処置法を講究するは姑息だ。先づ正論によつて撃ち破り、前政府の非を改め、而して後にこそ、その処分法を議すべきである。然らざれば、如何に善き処分法を立つるとも、人心快然たることなし。何時までも鬱積して破裂せざれば、民心遂に離散すべし。

  • 天災とは言ひながら、東北の津浪は酷いではないか。政府の役人は、どんなことをして手宛をして居るか、法律でござい、規則でございと、平生やかましく言ひ立て居る癖に、この様な時には口で言ふ程に、何事も出来ないのを、おれは実に歯痒く思ふよ。

  • 人には余裕といふものが無くては、とても大事は出来ないヨ。昔からともかくも一方の大将とか、一番槍の功名者とかいふ者は、たとへどんな風に見えても、その裏の方から覗いて見ると、ちやんと分相応に余裕を備えてゐたものだヨ。

  • 無暗に神経を使つて、矢鱈に世間の事を苦に病み、朝から晩まで頼みもしないことに奔走して、それがために頭が禿げ鬚が白くなつて、まだ年も取らないのに耄碌してしまふといふやうな憂国家とかいふものには、おれなどはとてもなれない。

  • 先生方の騒ぐのを見ても、少しも驚かないよ。此の方自身もさうやつて来たのだからネ。『ハヽア、あすこをやつて居る』と思ふだけサ。それで、ワシは言ふのサ、『若いうちは、それでなければならないから、何ぼでも騒ぎなさい。然しそれでいゝと思はないやうになさい』

  • 今日は、ドウやつて此の東洋の逆運を切り抜けようかと肝胆を砕かねばならぬ時で、国家問題とは、実にこの事だ。今頃世間で国家問題といつて居るのはみな嘘だ。あれはみな、自分の頭の上の計算ばかりだ。議員の頭の揃ふ揃はんのと気を揉むのも、あまり賞めた事でもあるまいよ。

  • 先日も戦争の始末を聞きに来た者がある。聞けば近頃は日々百人も死ぬさうだ。罪なき者を殺して、知りもせぬ後の始末を人にきく。それだから腹も立つのだ。

  • 何でも人間は乾児(こぶん)のない方が善いのだ。見なさい。西郷も乾児のために骨を秋風に曝したではないか。およそ天下に乾児のないものは、恐らくこの勝安芳一人だらうよ。それだから、おれは、起きようが寝ようが、喋らうが、黙らうが、自由自在気随気儘だよ。

  • 世間は連戦連勝なんぞと狂喜し居れど、いつかはまた逆運に出会はなければなるまいから、今からその時の覚悟が大切だヨ。しかし、今の人はたいてい、先輩が命がけでやつた仕事のお蔭で、顕要の地位を占めて居るのだから、一度は大危難の局に当つて試験を受けるのが順序だらうヨ。

  • 支那もすぐに降服すべしと思ひたらんが、案外長く抗抵する。朝鮮も後には追々苦情を申立て我に背くに至らん。今はたゞ官吏の圧制に恐れて黙つて居るのだ。自分ばかり正しい、強いと言ふのは、日本のみだ。世界はさう言はぬ。

  • 戦争などといふやつは決して容易の事でするものでないよ。幕府の末路などを御覧ナ。長州征伐などと馬鹿な事をやつたから、金は使ふ、結局幕府の運命を縮めたわけサ。

  • 人物になるとならないのとは自己の修養いかんにあるのだ。決して他人の世話によるものではない。 野菜は肥をすれば一尺ぐらゐづつは揃つて生長する。しかしそれ以上に生長させる ことはいくら肥をしたつて駄目だ。野菜は、野菜だけしか生長することが出来ないのさ。

  • 世に処するには、どんな難事に出会つても臆病ではいけない。さあ何程でも来い。おれの身体が、ねぢれるならば、ねぢつて見ろ、といふ了簡で、事を捌いて行く時は、難事が到来すればするほど面白味が付いて来て、物事は雑作もなく落着してしまふものだ。

  • 近頃世間で時々西郷が居たらとか、大久保が居たらとかいふものがあるが、あれは畢竟自分の責任を免れるための口実だ。人を当てにしては駄目だから、自分で西郷や大久保の代りをやればよいではないか。

  • 速ならんと欲せば大事成らず、切々事に迫るは処世の大禁物だ。虚心坦懐、徐ろに人事を尽して天命を俟つのみ。

  • いくら戦争に勝つても、軍艦が出来ても、国が貧乏で、人民が喰へなくては仕方がない。やれ朝鮮は 弱いの、支那人の頭を叩いたのと言つて喜んで居ても、国家の生命に関する大問題がそつちのけに せられるやうでは、まだ鎖国の根性が抜けないといふものだ。

  • 心は明鏡止水のごとし、といふ事は、若い時に習つた剣術の極意だが、外交にもこの極意を応用し て、少しも誤らなかつた。たゞたゞいつさいの思慮を捨てゝしまつて、妄想や雑念が、霊智を曇らすこと のないやうにしておくばかりだ。

  • 国是とか何とか世間の人はやかましくいふが、口にいふばかりが国是ではない。十年も百年も、確然として動かないところのもので、何人からも認識せられてこそ、初めて国是といふことができるのだ。

  • 時勢は、人を造るものだ。今日いろいろの学問や、智恵のある人だちが、これから種々の困難に出会つて、実際にその学問を試したり、その心胆を錬つたりなどすると、将来に起るべき、東洋の大禍乱をも、切り開くだけの人物になれるだらうヨ。

  • アナタ方は、徳川の政治とお思ひなさるから、間違つて居ます。天下の政治です。それを、左様なぬるい考へで済みますか。第一将軍様から間違つて居る。私共如きでも、徳川の役人だと、お思ひなさるから間違つて居ます。矢張り天子の役人であります。

  • 世間では、茶屋などをば、人間堕落の場所といつて擯斥するけれども、こまかに観察すると、その中にはなかなか面白味があるものだ。畢竟、その人の見やうによつて、善ともなり悪ともなり、利ともなり害ともなるのだ。そこがまた世の中の面白いところサ。

  • おれは、国々を別々に見るといふことはしないで、東洋の二字の上より何事も打算するよ。それだから、今の外交家のする仕事は、おれの目には、まるで小人島の豆人間が仕事をするやうに見えるのだよ。

  • 政治をするには、学問や知識は、二番めで、至誠奉公の精神が、一番肝腎だ。

  • おれはずるい奴だらう。横着だらう。しかしさう急いでも仕方がないから、寝ころんで待つが第一サ。

  • 日本人もあまり戦争に勝つたなどと威張つて居ると、後で大変な目にあふヨ。剣や鉄砲の戦争には勝つても、経済上の戦争に負けると、国は仕方がなくなるヨ。そして、この経済上の戦争にかけては、日本人は、とても支那人には及ばないだらうと思ふと、おれはひそかに心配するヨ。

  • おれなどは維新前から日清韓三国合縦の策を主唱して、支那朝鮮の海軍は日本で引受くる事を計画したものサ。今日になつて兄弟喧嘩をして、支那の内輪をサラケ出して、欧米の乗ずるところとなるくらゐのものサ。

  • 行蔵は我に存す。毀誉は他人の主張。我に与らず我に関せずと存候。

  • おれが政権を奉還して、江戸城を引き払ふやうに主張したのは、いはゆる国家主義から割り出したものサ。三百年来の根底があるからといつたところが、時勢が許さなかつたらどうなるものか。かつまた都府といふものは、天下の共有物であつて、決して一個人の私有物ではない。





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