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福澤 諭吉の名言集

公開日: : 最終更新日:2014/03/29 は~ほ, , ,


福澤 諭吉

福澤 諭吉(ふくざわ ゆきち、1835年1月10日(天保5年12月12日 (旧暦) 12月12日) – 1901年(明治34年)2月3日)

明治期の思想家、東京学士会院初代院長

慶應義塾大学 慶應義塾創設者として、明治の明治六大教育家 六大教育家に数えられる。
1984年~2004年の日本銀行券D号1万円札、2004年~のE号1万円札の肖像にも使用されているので時代を超えた人気者でもある。
現代では「福沢諭吉」と記載される事が多い。
なお「中村諭吉」と名乗っていた時期がある。

慶應義塾大学をはじめとする学校法人慶應義塾の運営する学校では、福澤諭吉のことを敬意をこめて「福澤先生」と呼ぶ。

1835年1月10日(天保5年12月12日)大坂堂島(大阪市北区 (大阪市) 北区)にあった豊前国中津藩(大分県中津市)の蔵屋敷で下級藩士福沢百助 於順の次男として生まれる。
諭吉という名の由来は、儒学者でもあった父が『上諭条例』(清の乾隆帝治世下の法令を記録した書)を手に入れた夜に彼が生まれたことによる。
父は大坂の商人を相手に藩の借財を扱う職にあったが、儒教に通じた学者でもあった。
しかしながら身分が低いため身分格差の激しい中津藩では名をなすこともできずにこの世を去った。
そのため息子である諭吉は後に「門閥制度は親のかたき」とすら述べており、自身も封建制 封建制度には疑問を感じていたと述べている。
なお、母兄姉と一緒に暮してはいたが、幼時から叔父中村術平の養子になり中村姓を名乗っていた。
後、福澤の実家に復する。


  • 今日においても、西洋の諸大家が日新の説を唱えて人を文明に導くものを見るに、その目的はただ古人の確定して駁(ばく)すべからざるの論説を駁し、世上に普通にして疑いを容るべからざるの習慣に疑いを容るるにあるのみ。

  • 西洋諸国の人民が今日の文明に達したるその源を尋ぬれば、疑いの一点より出でざるものなし。

  • 一身の私徳において恵与の心はもっとも貴ぶべく最も好(よ)みすべきものなり。譬(たと)えば天下に乞食を禁ずるの法はもとより公明正大なるものなれども、人々の私において乞食に物を与えんとするの心は咎むべからず。

  • 人民は租税を出だして政府の入用を給し、その世帯向きを保護するものなり。しかるに専制の政にて、人民の助言をば少しも用いず、またその助言を述ぶべき場所もなきは、これまた保護の一方は達して指図の路は塞(ふさ)がりたるものなり。人民の有様は大きに御苦労なりと言うべし。

  • 禁酒の指図もできずしてみだりに米を与うるは、指図の行き届かずして保護の度を越えたるものなり。諺にいわゆる「大きに御苦労」とはこのことなり。

  • 保護と指図とは両(ふたつ)ながらその至るところをともにし、寸分も境界を誤るべからず。保護の至るところはすなわち指図の及ぶところなり。指図の及ぶところは必ず保護の至るところならざるを得ず。

  • 世話の字に二つの意味あり、一は「保護」の義なり、一は「命令」の義なり

  • そもそも事をなすに、これを命ずるはこれを諭すに若(し)かず、これを諭すはわれよりその実の例を示すに若かず。然りしこうして政府はただ命ずるの権あるのみ

  • 政府にて事をなすはすでに数年の実験あれどもいまだその奏功を見ず、あるいは私の事もはたしてその功を期し難しといえども、議論上において明らかに見込みあればこれを試みざるべからず。いまだ試みずしてまずその成否を疑う者はこれを勇者と言うべからず

  • 生来今日に至るまでわが身は何事をなしたるや。今は何事をなせるや。今後は何事をなすべきや

  • 世に功業を企てて誤る者を傍観すれば、実に捧腹(ほうふく)にも堪えざるほどの愚を働きたるように見ゆれども、そのこれを企てたる人は必ずしもさまで愚なるにあらず

  • 人生活発の気力は物に接せざれば生じ難し。自由に言わしめ、自由に働かしめ、富貴も貧賤もただ本人のみずから取るにまかして、他よりこれを妨ぐべからざるなり。

  • 言路を塞ぎ、業作を妨ぐるのことは、ひとり政府のみの病にあらず、全国人民の間に流行するものにて、学者といえども、あるいはこれを免れ難し。

  • 人間最大の禍は怨望にありて、怨望の源は窮より生ずるものなれば、人の言路は開かざるべからず、人の業作は妨ぐべからず。

  • 二千年前に行なわれたる教えをそのままに、しき写しして明治年間に行なわんとする者は、ともに事物の相場を談ずべからざる人なり。

  • 元来人の性情において働きに自由を得ざれば、その勢い必ず他を怨望せざるを得ず。

  • 怨望は貧賤によりて生ずるものにあらず。ただ人類天然の働きを塞(ふさ)ぎて、禍福の来去みな偶然に係るべき地位においてはなはだしく流行するのみ。

  • 怨望は働きの陰なるものにて、進んで取ることなく、他の有様によりて我に不平をいだき、我を顧みずして他人に多を求め、その不平を満足せしむるの術は、我を益するにあらずして他人を損ずるにあり。

  • 銭を好む心の働きを見て、直ちに不徳の名をくだすべからず。その徳と不徳との分界には一片の道理なるものありて、この分界の内にあるものはすなわちこれを節倹と言い、また経済と称して、まさに人間の勉(つと)むべき美徳の一ヵ条なり。

  • 元来、人民と政府との間柄はもと同一体にてその職分を区別し、政府は人民の名代となりて法を施し、人民は必ずこの法を守るべしと、固く約束したるものなり。

  • 事物の是(ぜ)を是とするの心と、その是を是としてこれを事実に行なうの心とは、まったく別のもの

  • 視察、推究、読書はもって智見を集め、談話はもって智見を交易し、著書、演説はもって智見を散ずるの術なり。

  • 学問の要は活用にあるのみ。活用なき学問は無学に等し。

  • 親子の交際はただ智力の熟したる実の父母と十歳ばかりの実の子供との間に行なわるべきのみ。他人の子供に対してはもとより叶(かな)い難し。たとい実の子供にても、もはや二十歳以上に至ればしだいにその趣を改めざるを得ず。

  • 政府はなお生力のごとく、人民はなお外物の刺衝のごとし。 今にわかにこの刺衝を去り、ただ政府の働くところにまかしてこれを放頓することあらば、国の独立は一日も保つべからず。

  • 学問に入らば大いに学問すべし。農たらば大農となれ、商たらば大商となれ。学者小安に安んずるなかれ。粗衣粗食、寒暑を憚(はばか)らず、米も搗(つ)くべし、薪も割るべし。学問は米を搗きながらもできるものなり。

  • 学べばしたがってこれを実地に施すべし。たとえば洋学生、三年の修業をすればひととおりの歴史・窮理書を知り、すなわち洋学教師と称して学校を開くべし、また人に雇われて教授すべし、あるいは政府に仕えて大いに用いらるべし。

  • 「汝の額の汗をもって汝の食(めし)を食(く)らえ」とは古人の教えなれども、余が考えには、この教えの趣旨を達したればとていまだ人たるものの務めを終われりとするに足らず。この教えはわずかに人をして禽獣に劣ることなからしむるのみ。

  • かりそめにも政府に対して不平をいだくことあらば、これを包みかくして暗に上(かみ)を怨むることなく、その路を求め、その筋により静かにこれを訴えて遠慮なく議論すべし。

  • 一身の衣食住を得てこれに満足すべきものとせば、人間の渡世はただ生まれて死するのみ

  • 世間の父母たる者、よく子を生めども子を教うるの道を知らず、身は放蕩無頼を事として子弟に悪例を示し、家を汚し産を破りて貧困に陥り、気力ようやく衰えて家産すでに尽くるに至れば放蕩変じて頑愚となり、すなわちその子に向かいて孝行を責むるとは、はたしてなんの心ぞや。

  • 天理に戻(もと)ることを唱うる者は孟子にても孔子にても遠慮に及ばず、これを罪人と言いて可なり。

  • 西洋人の実験によれば、男子の生まるることは女子よりも多く、男子二十二人に女子二十人の割合なりと。されば一夫にて二、三の婦人を娶(めと)るはもとより天理に背くこと明白なり。これを禽獣と言うも妨げなし。

  • 力ずくにて人の物を奪うか、または人を恥ずかしむる者あれば、これを罪人と名づけて刑にも行なわるることあり。しかるに家の内にては公然と人を恥ずかしめ、かつてこれを咎むる者なきはなんぞや。

  • そもそも世に生まれたる者は、男も人なり女も人なり。この世に欠くべからざる用をなすところをもって言えば、天下一日も男なかるべからず、また女なかるべからず。

  • 節を屈して政府に従うははなはだよろしからず。人たる者は天の正道に従うをもって職分とす。しかるにその節を屈して政府人造の悪法に従うは、人たるの職分を破るものと言うべし。

  • 二円の金を払うて政府の保護を被り、夜盗押込みの患いもなく、ひとり旅行に山賊の恐れもなくして、安穏にこの世を渡るは大なる便利ならずや。およそ世の中に割合よき商売ありといえども、運上を払うて政府の保護を買うほど安きものはなかるべし。

  • 人民たる者は平生よりよく心を用い、政府の処置を見て不安心と思うことあらば、深切にこれを告げ、遠慮なく穏やかに論ずべきなり。

  • 政府の定めたる法を見て不便なりと思うことあらば、遠慮なくこれを論じて訴うべし。すでにこれを認めてその法の下に居るときは、私にその法を是非することなく謹んでこれを守らざるべからず。

  • 政府にて法を立つるは勉(つと)めて簡なるを良とす。すでにこれを定めて法となすうえは必ず厳にその趣意を達せざるべからず。

  • 昔、徳川の時代に、浅野家の家来、主人の敵討ちとて吉良上野介(きらこうずけのすけ)を殺したることあり。世にこれを赤穂(あこう)の義士と唱えり。大なる間違いならずや。

  • もし心得違いして私に罪人を殺し、あるいは盗賊を捕えてこれを笞(むち)うつ等のことあれば、すなわち国の法を犯し、みずから私に他人の罪を裁決する者にて、これを私裁と名づけ、その罪免(ゆる)すべからず。この一段に至りては文明諸国の法律はなはだ厳重なり。

  • 国民の法を破るは政府の作りし法を破るにあらず、みずから作りし法を破るなり。その法を破りて刑罰を被(こうむ)るは政府に罰せらるるにあらず、みずから定めし法によりて罰せらるるなり。

  • 国民たる者は一人にて二人前の役目を勤むるがごとし。すなわちその一の役目は、自分の名代として政府を立て、一国中の悪人を取り押えて善人を保護することなり。その二の役目は、固く政府の約束を守りその法に従いて保護を受くることなり。

  • 国民の政府に従うは政府の作りし法に従うにあらず、みずから作りし法に従うなり。国民の法を破るは政府の作りし法を破るにあらず、みずから作りし法を破るなり。

  • 人と人との釣合いを問えばこれを同等と言わざるを得ず。ただしその同等とは有様の等しきを言うにあらず、権理道義の等しきを言うなり。

  • 人民もし暴政を避けんと欲せば、すみやかに学問に志しみずから才徳を高くして、政府と相対し同位同等の地位に登らざるべからず。これすなわち余輩の勧むる学問の趣意なり。

  • 貧富・強弱は国の有様なれば、もとより同じかるべからず。しかるにいま、自国の富強なる勢いをもって貧弱なる国へ無理を加えんとするは、いわゆる力士が腕の力をもって病人の腕を握り折るに異ならず、国の権義において許すべからざることなり。

  • 政(まつりごと)は一国の働きなり。 この働きを調和して国の独立を保たんとするには、内に政府の力あり、外に人民の力あり、内外相応じてその力を平均せざるべからず。

  • 一国中に人を支配するほどの才徳を備うる者は千人のうち一人に過ぎず。

  • 文明の事を行なう者は私立の人民にして、その文明を護する者は政府なり。

  • 世の悪しき諺に、「泣く子と地頭には叶わず」と。またいわく、「親と主人は無理を言うもの」などとて、あるいは人の権理通義をも枉(ま)ぐべきもののよう唱うる者あれども、こは有様と通義とを取り違えたる論なり。

  • 近くはわが日本国にても、今日の有様にては西洋諸国の富強に及ばざるところあれども、一国の権義においては厘毛の軽重あることなし。道理に戻(もと)りて曲を蒙(こうむ)るの日に至りては、世界中を敵にするも恐るるに足らず。

  • そもそも人の勇力はただ読書のみによりて得べきものにあらず。読書は学問の術なり、学問は事をなすの術なり。実地に接して事に慣るるにあらざればけっして勇力を生ずべからず。

  • その工夫発明、まず一人の心に成れば、これを公にして実地に施すには私立の社友を結び、ますますその事を盛大にして人民無量の幸福を万世に遺(のこ)すなり。この間に当たり政府の義務は、ただその事を妨げずして適宜に行なわれしめ、人心の向かうところを察してこれを保護するのみ。

  • 国の文明は上(かみ)政府より起こるべからず、下(しも)小民より生ずべからず、必ずその中間より興りて衆庶(しゅうしょ)の向かうところを示し、政府と並び立ちてはじめて成功を期すべきなり。

  • すべて世の事物をくわしく論ずれば、利あらざるものは必ず害あり、得あらざるものは必ず失あり、利害得失相半ばするものはあるべからず。

  • 政府威を用うれば人民は偽をもってこれに応ぜん、政府欺(ぎ)を用うれば人民は容(かたち)を作りてこれに従わんのみ。

  • 人あるいはいわく、「政府はしばらくこの愚民を御するに一時の術策を用い、その智徳の進むを待ちて後にみずから文明の域に入らしむるなり」と。 この説は言うべくして行なうべからず。

  • 独立の気力なき者は人に依頼して悪事をなすことあり。

  • 常に人を恐れ人に諛う者はしだいにこれに慣れ、その面の皮、鉄のごとくなりて、恥ずべきを恥じず、論ずべきを論ぜず、人をさえ見ればただ腰を屈するのみ。いわゆる「習い、性となる」とはこのことにて、慣れたることは容易に改め難きものなり。

  • 独立の気力なき者は必ず人に依頼す、人に依頼する者は必ず人を恐る、人を恐るる者は必ず人に諛(へつら)うものなり。

  • 内に居て独立の地位を得ざる者は、外にありて外国人に接するときもまた独立の権義を伸ぶること能わず。

  • 独立とは自分にて自分の身を支配し他によりすがる心なきを言う。みずから物事の理非を弁別して処置を誤ることなき者は、他人の智恵によらざる独立なり。みずから心身を労して私立の活計をなす者は、他人の財によらざる独立なり。

  • これすなわち世に暴政府のある所以(ゆえん)なり。ひとりわが旧幕府のみならず、アジヤ諸国古来みな然り。されば一国の暴政は必ずしも暴君暴吏の所為のみにあらず、その実は人民の無智をもってみずから招く禍なり。

  • 今、日本国中にて明治の年号を奉ずる者は、今の政府の法に従うべしと条約を結びたる人民なり。ゆえにひとたび国法と定まりたることは、たといあるいは人民一個のために不便利あるも、その改革まではこれを動かすを得ず。小心翼々謹みて守らざるべからず。これすなわち人民の職分なり。

  • すなわちその権理通義とは、人々その命を重んじ、その身代所持のものを守り、その面目名誉を大切にするの大義なり。天の人を生ずるや、これに体と心との働きを与えて、人々をしてこの通義を遂げしむるの仕掛けを設けたるものなれば、なんらのことあるも人力をもってこれを害すべからず

  • 数年の辛苦を嘗め、数百の執行金を費やして洋学は成業したれども、なおも一個私立の活計をなし得ざる者は、時勢の学問に疎き人なり。これらの人物はただこれを文字の問屋と言うべきのみ。その功能は飯を食う字引に異ならず。国のためには無用の長物、経済を妨ぐる食客と言うて可なり。

  • 経書(けいしょ)・史類の奥義には達したれども商売の法を心得て正しく取引きをなすこと能(あた)わざる者は、これを帳合いの学問に拙(つたな)き人と言うべし。

  • えに学問には文字を知ること必要なれども、古来世の人の思うごとく、ただ文字を読むのみをもって学問とするは大なる心得違いなり。

  • 法の苛(から)きと寛(ゆる)やかなるとは、ただ人民の徳不徳によりておのずから加減あるのみ。人誰か苛政を好みて良政を悪(にく)む者あらん、誰か本国の富強を祈らざる者あらん、誰か外国の侮りを甘んずる者あらん、これすなわち人たる者の常の情なり。

  • 西洋の諺(ことわざ)に「愚民の上に苛(から)き政府あり」とはこのことなり。こは政府の苛きにあらず、愚民のみずから招く災(わざわい)なり。愚民の上に苛き政府あれば、良民の上には良き政府あるの理なり。ゆえに今わが日本国においてもこの人民ありてこの政治あるなり。

  • 智恵なきの極みは恥を知らざるに至り、己(おの)が無智をもって貧窮に陥り飢寒に迫るときは、己が身を罪せずしてみだりに傍(かたわら)の富める人を怨み、はなはだしきは徒党を結び強訴(ごうそ)・一揆などとて乱暴に及ぶことあり。恥を知らざるとや言わん、法を恐れずとや言わん。

  • およそ人たる者はそれぞれの身分あれば、またその身分に従い相応の才徳なかるべからず。身に才徳を備えんとするには物事の理を知らざるべからず。物事の理を知らんとするには字を学ばざるべからず。これすなわち学問の急務なるわけなり。

  • 人の一身も一国も、天の道理に基づきて不覊(ふき)自由なるものなれば、もしこの一国の自由を妨げんとする者あらば世界万国を敵とするも恐るるに足らず、この一身の自由を妨げんとする者あらば政府の官吏も憚(はばか)るに足らず。

  • 政府の官吏を粗略にせざるは当然のことなれども、こはその人の身の貴きにあらず、その人の才徳をもってその役儀を勤め、国民のために貴き国法を取り扱うがゆえにこれを貴ぶのみ。人の貴きにあらず、国法の貴きなり。

  • ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人(げにん)となるなり。

  • 『実語教(じつごきょう)』に、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。

  • されば今より後は日本国中の人民に、生まれながらその身につきたる位などと申すはまずなき姿にて、ただその人の才徳とその居処(きょしょ)とによりて位もあるものなり。

  • 西洋の文明もとより慕うべし。これを慕いこれに倣(なら)わんとして日もまた足らずといえども、軽々これを信ずるは信ぜざるの優に若(し)かず。彼の富強はまことに羨むべしといえども、その人民の貧富不平均の弊をも兼ねてこれに倣うべからず。

  • 人を慕うのあまりにその悪事に倣うとは笑うべきのはなはだしきにあらずや。

  • 西洋の文明はわが国の右に出ずること必ず数等ならんといえども、けっして文明の十全なるものにあらず。その欠点を計(かぞ)うれば枚挙に遑(いとま)あらず。彼の風俗ことごとく美にして信ずべきにあらず、我の習慣ことごとく醜にして疑うべきにあらず。

  • 世事転遷の大勢を察すれば、天下の人心この勢いに乗ぜられて、信ずるものは信に過ぎ、疑うものは疑いに過ぎ、信疑ともにその止まるところの適度を失するものあるは明らかに見るべし。

  • 然りといえども、わが人民の精神においてこの数千年の習慣に疑いを容れたるその原因を尋ぬれば、はじめて国を開きて西洋諸国に交わり、かの文明の有様を見てその美を信じ、これに倣(なら)わんとしてわが旧習に疑いを容れたるものなれば、あたかもこれを自発の疑いと言うべからず。

  • 然りといえども、事物の軽々信ずべからざることはたして是(ぜ)ならば、またこれを軽々疑うべからず。この信疑の際につき必ず取捨の明(めい)なかるべからず。けだし学問の要はこの明智を明らかにするにあるものならん。

  • 一議したがって出ずれば一説したがってこれを駁し、異説争論その極(きわ)まるところを知るべからず。


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